灘中の算数対策|分野別対策と学習方針

灘中の算数は、日本で最も難しい算数の入試問題です。しかも、算数は点差がつきやすく、合否を分けやすい科目です。そのため、灘中を目指すなら、早い段階から正しい対策を積み重ねていくことが大切です。

私自身、灘の卒業生であり、高校受験で灘に合格しました。中学受験とは形式の違いはありますが、灘という学校に求められる学力の高さや、表面的な理解では通用しないことは実感しています。そのため、このページでも、灘に求められる水準を踏まえて、灘中の算数の分野別対策と学習方針を説明しています。

分野別対策

数の性質

灘中の数の性質では、特殊解法よりも、書き出し・規則性の発見・基本事項の活用が重要です。

よく出るのは、書き出しによって規則性を見つけ、条件を絞って、最後は計算で答えを出す問題です。したがって、書き出しや地道な計算を、速く正確に行う意識が必要です。

また、同じ数を何度も掛け合わせた数の余り、積を面積図で考える問題、位取りの差を考える問題も重要です。さらに、約数・公約数・倍数・倍数判定法など、極めて基本的な内容を利用する問題も多く見られます。

灘では、見た目は難しくても、実際には基本事項を深く使う問題が少なくありません。そのため、基本事項をただ暗記するのではなく、問題の中で使える状態まで仕上げる必要があります。灘中の数の性質では、難しそうに見える問題でも、実際には書き出し・規則性の発見・基本事項の活用で処理するものが多くあります。特別な解法を知っているかどうかより、具体的に調べ、条件を絞り、最後は計算で答えを出す力が大切です。

比・割合

比・割合では、見た目は複雑でも、実質的には食塩水の考え方で処理できる問題が多くあります。

たとえば、食塩水の濃度の問題を、不良品率という形で問う問題があります。見た目は違っても、実質は食塩水の問題なので、そこを見抜けると取り組みやすくなります。

なお、食塩水の問題そのものでは、天秤図やフローチャートを書けば解きやすいものが多い一方で、食塩など濃度100%のものを加えても水の量は変化しない問題など、初見では処理しにくいものもある点には注意が必要です。

速さ

速さでは、図で整理する力が非常に重要です。

特に灘では、ダイヤグラムを書いて処理することが必須になる場面が少なくありません。複数の人物が動く問題、折り返しを含む問題、出発時刻にずれがある問題では、ダイヤグラムが大きな武器になります。ただし、書くだけでは不十分で、どこに着目し、どうやって処理するかが難しい問題があるので、処理できるレベルの高い学力を身につける必要があります。

また、比例式を立てて、内項の積=外項の積で立式し、最後は消去算のように処理する問題も出題されるので、図で整理するだけでなく式で処理する能力も要求されます。

さらに、それぞれの速さそのものが分からず、速さの和や差だけを利用して解く問題もあります。これは流水算の応用でも重要です。灘では、一つ一つの速さを出すことにこだわるより、和や差の関係だけで処理した方がよい問題もあり、そうした見方を持っているかどうかが得点力に直結します。

平面図形

平面図形は、灘中算数の中でも、他の最難関校との違いが出やすい分野です。特に、合同の扱いと補助線の引き方には、灘らしい特徴があります。

他の最難関校でも、相似や面積、図形の移動、対称性は重要です。もちろん灘でも、対称性に注目すること、平行線や垂線を引くことなど、基本的な見方・補助線の引き方は重要です。
ただし灘では、それだけでは足りず、図の見え方そのものを変える補助線が必要になることが少なくありません。

特に合同は、灘の平面図形で非常に重要です。相似に比べると軽く扱われることもありますが、灘では、回転・複数の正多角形・直角三角形の組み合わせの中で、合同に気づけるかどうかがそのまま得点差になります。「二辺とその間の角が等しい」・「三辺が等しい」・「一辺とその両端の角が等しい」という合同条件を正確に使えることが必要です。「形が何となく同じに見える」ではなく、どの条件で合同だと言えるかを明確にしながら図を見る力が求められます。

また、補助線の引き方にも灘らしさがあります。他校では、もとの図の中で関係を見つける問題が比較的多いのに対し、灘では、不足している図を自分で補って復元するような発想が必要になることがあります。たとえば、小さな正方形しか描かれていない図から、周りに直角三角形を作って大きな正方形を復元して考える問題は、その典型です。

正方形の周りに直角三角形を作る、図形を囲むように線を足す、回転後の位置を補って全体の形を見えるようにする、といった処理は灘で特に重要です。

立体図形

立体図形は、灘中算数の中でも特に要求水準の高い分野です。切断、投影図、高さによる切断面の変化、展開図から見取り図を描く処理まで、全体に高いレベルが求められます。

特に重要なのは切断です。灘では、立方体の切断だけを練習していても十分ではありません。立方体に加えて、正四面体、正八面体、正六角柱など、基本的な立体以外の立体についても切断面の形を書けるだけではなく、どの辺を通るのか、どの面に現れるのか、切ったあとの立体をどうとらえるのかまで含めて処理できることが大切です。

また、灘では、単に切断面を書くだけでなく、切断されたあとの辺の長さ・面積・体積をどう求めるかまで問われることがよくあります。そのため、切断面の形を理解するだけでなく、どの部分が残り、どの部分が削られるのかを見取り図の中で整理する力が必要です。基本立体ごとの典型的な切断パターンは、早い段階で押さえておくべき内容です。高さによって切断面がどう変化するかをとらえる問題も、灘らしい難しさがあります。同じ立体でも、切る高さが変われば切断面の形や大きさは変わります。そのため、一つの断面だけでなく、高さが上下するにつれてどのように断面が変化するかを連続的にイメージする必要があります。

投影図も重要です。灘では、投影図を立体の移動や位置関係と結びつけてイメージし、処理できることが必要になります。上から見た図、正面から見た図、横から見た図を別々に考えるのではなく、それぞれが同じ立体のどの情報を表しているのかを対応させながら考えなければなりません。

さらに、灘ではパップスの定理を背景にした回転体の体積処理につながる感覚も重要です。もちろん小学生に抽象的な定理名だけを覚えさせるのではありませんが、図形の重心がどれだけ移動するか、回転によってどれだけの体積が生まれるかという見方は、難しい立体問題を整理するうえで有効です。単なる公式暗記ではなく、面積と移動距離、立体と回転の関係をイメージできることが大切です。

頻出の展開図の問題についても、展開図から元の見取り図を描き、体積などの求積につなげられることが必要です。そのためには、まず立方体や角柱などの基本的な立体を正確に思い浮かべ、そこから削る・補うという見方で、展開図が表している立体を元の形に戻して考える力が必要です。

灘の立体図形では、基本的な立体を正確にイメージし、切断・投影図・回転体・展開図を相互につながったものとして処理できることが重要です。特に切断と投影図の問題は、早い段階から丁寧に解いておく必要があります。

場合の数

場合の数では、再現できる解法を持つことが何より大切です。解法としては鮮やかでも、小学生が本番で思いつきにくい方法に頼りすぎると、得点は安定しません。灘対策では、きれいな一発解法よりも、自分で再現できる現実的な解法を重視するべきです。

その中心になるのが書き出しです。場合の数では、書き出しは初歩的な方法だと思われがちですが、灘ではむしろ重要です。ただし、何も考えず全部書くのではなく、条件を整理し、順番を決め、漏れや重複が出ないように並べる必要があります。つまり、書き出しにも技術があります。

また、立体の道順の図に置き換える、時間差を一つずつ処理する、操作を順に追うといった整理も有効です。複雑な問題ほど、一気に処理しようとせず、途中の状態を丁寧に追った方が安定します。

学習方針

灘中の算数では、頻出分野はあるものの、特定の分野だけを仕上げれば十分という考え方は通用しません。他の最難関中で合否を分けるレベルの問題までは、苦手分野であっても確実に解ける学力が必要になります。そのため、灘中の算数対策では、一部の分野だけを先に深く進めるのではなく、まず全体で大きな穴を作らないことが重要です。進め方としても、基本的には塾のカリキュラムに合わせながら、各分野を広く押さえ、その中で弱い分野を補い、必要な分野をさらに深く理解していく形が合理的です。

また、1日目も2日目も、解き方の方針の引き出しが多い方が有利です。1日目は、短い時間で方針を立てて処理する力が必要であり、見た瞬間にどの方向から考えるかを決めやすいほど有利になります。2日目は問題文の誘導にうまく乗ることが重要ですが、見慣れた処理方針や考え方が多いほど、「ここではこの方針を使えばうまく誘導に乗れる」と判断しやすくなります。その点でも、見慣れた処理方針や考え方を多く持っていることが必要です。灘対策では、一つの解法だけを覚えるのではなく、別解を考えたり、異なる角度から問題を検討して、方針の引き出しを増やしていくことが大切です。

さらに、灘では数え上げや調べる力も非常に重要です。範囲を絞ったうえで最後は書き出して確認する問題では、速く正確に書き出す訓練が必要です。場合の数や数の性質では、解説のような考え方が本番でそのまま出るとは限らないため、実際に手を動かして確認する習慣が欠かせません。

数の性質

数の性質では、単に解法を覚えるだけでは不十分です。
灘では、書き出し方、規則の見つけ方、基本事項の使い方を組み合わせながら処理する力が求められます。どこまで調べれば十分か、どの段階で規則としてまとめるか、どの基本知識を使うかを整理しながら対策を進めることが大切です。

また、面積図や位取りの考え方も、単独のテクニックとして覚えるのではなく、数の性質の問題を整理する道具として使えるようにしておく必要があります。解説を読んで分かったつもりで終わらず、自分で同じ流れを再現できる状態を目指すことが重要です。

比・割合

比・割合では、食塩水などの典型問題を解けるだけでは足りません。
見た目は違っても、同じ考え方で処理できると見抜けることが重要です。割合だけを見るのではなく、全体量・中身の量・変わらない量を分けて考える力をつけていく必要があります。

また、天秤図とフローチャートの使い分けも重要です。どの解法を使えば見通しがよくなるかを考えながら、問題を解く必要があります。

速さ

速さでは、ダイヤグラムを書いて処理する力を早めに定着させることが大切です。
ただし、ダイヤグラムを万能な道具として扱うのではなく、線分図で整理した方がよい場面との使い分けまで含めて身につける必要があります。

また、ダイヤグラムは「書ける」だけでは不十分です。そこから何を読み取るか、どの相似を使うかまで理解したうえで、和や差に注目する問題や、問題文の誘導に沿って処理する問題へ進むことが重要です。

平面図形

平面図形では、対称性に注目する補助線、相似を利用するための平行線・垂線といった基本的な補助線を確実に使えることが前提になります。
灘では、そのうえで復元の補助線など、より発想力を求められる問題へ進むべきです。まず基本補助線を確実に使える状態にしておくことが大切です。

また、合同条件を正確に確認し、合同を見抜く必要のある問題を多く扱うことも重要です。灘では合同の扱いが特に重要なので、「何となく同じ形」に見えるという感覚ではなく、どの条件で合同といえるかを明確にしながら考える習慣が必要です。

立体図形

立体図形では、基本立体のイメージ、見取り図、補助面、切断面の処理手順をしっかり身につける必要があります。
灘では、立方体・直方体だけでなく、正四面体・正八面体・正六角柱まで含めて、幅広い立体図形の処理力が求められます。

また、切断では、切断面の形を求めるだけでなく、切断後の体積まで処理できることが必要です。投影図についても、上から見た図・正面図・側面図を別々に覚えるのではなく、同じ立体の見え方として対応させながら考える練習が重要です。

さらに、高さによる切断面の変化や、展開図から見取り図へ戻す処理も早めに扱っておく必要があります。回転体についても、単なる公式暗記ではなく、面積・重心・移動距離の関係を意識しながら整理することが大切です。

場合の数

場合の数では、きれいな一発解法を知っていることよりも、漏れなく書き出す方法、順序よく整理する方法、場合分けの基準を持っていることが重要です。
実際の試験では、本人が再現できるかどうかが結果を左右します。

そのため、書き出しを軽視しないことが大切です。どの順に並べれば整理しやすいか、どこで場合分けすると漏れにくいか、どの情報を先に固定すると見通しが立つかを意識しながら演習を進める必要があります。操作や時間差の問題でも、途中状態を追う書き方を定着させることが重要です。

灘中志望で、算数対策にお悩みの方へ

灘中の算数で合格点をとるには、算数全体の学力を高めながら、さらに必要な分野で差がつく力をつけていくことが大切です。
そのため、塾のカリキュラムに合わせながら、弱点を補い、方針の引き出しを増やし、書き出しや調べる力まで含めて仕上げていく必要があります。

灘中志望で、算数対策にお悩みの方は、お問い合わせフォームからご相談ください。現在の成績や塾での状況に応じて、進め方をご提案します。

灘中志望の生徒に、実際にどのような方針で指導しているかを知りたい方は、灘中志望の算数指導方針もご覧ください。

模試の成績だけを見ると灘合格が難しく見えても、学力の中身を見極めると灘に合格できると判断できる場合もあります。
そうした事例については、 浜学園では甲陽を勧められた生徒が、灘に合格した事例に書いています。