中学受験理科|浮力の問題を2ステップで解く

中学受験の理科で「浮力」が苦手な小学生は少なくありません。
公式は覚えたはずなのに、どの体積を使うかが曖昧(全部?沈んでいる部分だけ?)で公式をうまく使えずに混乱して失点する——このパターンが典型です。

しかし、浮力は「手順」を固定すれば安定して解けます。この記事では、灘・東大卒のプロ家庭教師が、浮力を 2ステップだけで解ける形にして解説します。

1 .浮力の問題でつまずく原因と対策

浮力でつまずく原因は、だいたい次のどれかです。

  • 何の力が上向き/下向きなのかが図にできない
  • 「浮力=体積×密度」を使うときに、どの体積を使うかが曖昧(全部?沈んでいる部分だけ?)
  • 食塩水・油などで、密度の使い分けができない

浮力は暗記科目ではありません。
図→つり合い→計算の処理パターンに落とせば、得点源になります。これは理科全体でも同じ方針です(電気・ばね・浮力などを分野別に「処理パターン化」して定着させる)。

2. 浮力の解法手順:図とつり合い(2ステップ)

浮力の解法手順は、これだけです。

① 力の矢印を書く(上向き/下向きに分ける)
② 止まっているなら「上向きの合計=下向きの合計」を立てる

手順① 力の矢印を書く(登場する力は基本3つ)

浮力の問題で、まず書く矢印はこれだけで十分です。

  • 重さ(下向き)
  • 浮力(上向き)
  • 糸・ばねはかりが引っ張る力(上向き:基本)

手順② 上向きの力の合計=下向きの力の合計

物体が静止しているなら、必ず

上向きの力の合計=下向きの力の合計

が成り立ちます。
浮力は、このつり合いの式に入れて処理します。

3. 浮力の基本知識(覚えるのは1行だけ)

浮力は、押しのけた液体の重さです。

計算式で表すと、

  • 浮力=水中にある部分の体積(cm³)× 液体の密度(g/cm³)

※水の密度は 1 g/cm³。食塩水・油などは問題文の密度を使います。

ここで重要なのは、「体積」は 水中にある部分 ということ。
全部沈めたなら全部、浮いて一部が出ているなら沈んでいる部分だけが、水中にある部分です。

浮力は、水中での重さの変化や力のはたらきを整理して考えることが大切な単元です。
また、力の向きやつり合いという点で、力学分野全体にもつながる単元です。
単元どうしのつながりも含めて理解したい方は、【中学受験の力学分野の対策まとめ】もあわせてご覧ください。

4 .中学受験レベルの浮力問題例と解説

例題①ばねはかりと完全に沈んだ物体

〈問題〉
重さ200g の物体を糸でつり、水中に完全に沈めて静止させると、ばねはかりの値は80gを指しました。この物体の体積は何㎤ですか。

糸でつった物体を水中に完全に沈め、ばねばかりで静止させた状態の図
図1:水中で静止。まず状況図を確認。

手順①:力の矢印 を書く。

この図で、上向きの力は、浮力・ばねはかりが物体を引く力になります。
また、下向きの力は物体の重さになるので、力の矢印は図2のようになります。

水中で静止する物体に働く力(重さ・浮力・張力)を矢印で示した図
図2:上向き(浮力+張力)=下向き(重さ)。

手順② 上向きの力の合計=下向きの力の合計

物体が静止しているため、上向きの力の合計=下向きの力の合計が成り立つので、

Xg+80g=200g
X=120

ここで、浮力=水中にある部分の体積(cm³)× 液体の密度(g/cm³)を用いると、

120g=□㎤×1g/㎤
□=120

よって、物体の体積は120㎤になります。

〈問題〉
体積100㎤ の物体を糸でつり、油の中に完全に沈めて静止させると、ばねはかりの値は50gを指しました。この物体の重さは何gですか。ただし、油の1㎤あたりの重さは、0.9gとします。

体積100cm3の物体を油の中に沈め、ばねばかりで静止させた状態の図
図1:油では密度(1cm3あたりの重さ)を問題文の値で使う。

手順①:力の矢印 を書く。

この図で、上向きの力は、浮力・ばねはかりが物体を引く力になります。

ここで、浮力=水中にある部分の体積(cm³)× 液体の密度(g/cm³)を用いると、

浮力=100㎤×0.9g/㎤
浮力=90g

また、下向きの力は物体の重さになるので、力の矢印は図2のようになります。

油中で静止する物体に働く力(重さ・浮力・張力)を矢印で示した図
図2:浮力=体積×油の密度。上向きの合計=下向きの合計で重さを出す。

手順② 上向きの力の合計=下向きの力の合計

物体が静止しているため、上向きの力の合計=下向きの力の合計が成り立つので、

50g+90g=Xg
X=140

よって、この物体の重さは140gになります。

例題②物体が浮いた場合

〈問題〉
体積200㎤ の物体を水に浮かべると、水面下の体積は120㎤になりました。
この物体の重さは何gですか。

水に浮く物体で、水面下の体積が120cm3と示された図
図1:浮いて静止なら、沈んでいる体積だけで浮力を求める。

手順①:力の矢印 を書く。

この図で、上向きの力は、浮力だけになります。

ここで、浮力=水中にある部分の体積(cm³)× 液体の密度(g/cm³)を用いると、

浮力=120㎤×1g/㎤
浮力=120g


また、下向きの力は物体の重さになるので、力の矢印は図2のようになります。

水に浮いて静止する物体に働く力(浮力と重さ)を矢印で示した図
図2:上向き(浮力)=下向き(重さ)

手順② 上向きの力の合計=下向きの力の合計

物体が静止しているため、上向きの力の合計=下向きの力の合計が成り立つので、

120g=Xg
X=120

よって、この物体の重さは120gになります。

〈問題〉
重さ70g・体積120㎤ の物体の上におもりAをのせると、物体は完全に沈みました。
おもりAの重さは何gですか。

浮いていた物体の上におもりAを載せた結果、完全に沈んだ状態の図
図2:完全に沈む=水中体積は物体の全体積

手順①:力の矢印 を書く。

この図で、上向きの力は、浮力だけになります。

ここで、浮力=水中にある部分の体積(cm³)× 液体の密度(g/cm³)を用いると、

浮力=120㎤×1g/㎤
浮力=120g


また、下向きの力は物体の重さ・Aの重さになるので、力の矢印は図2のようになります。

おもりAを載せて沈んだ物体に働く力(浮力と重さ+おもりA)を矢印で示した図
図2:浮力=重さ+おもりA

手順② 上向きの力の合計=下向きの力の合計

物体が静止しているため、上向きの力の合計=下向きの力の合計が成り立つので、

120g=Xg+70g
X=50

よって、おもりAの重さは50gになります。

例題③食塩水に沈めた場合

〈問題〉
重さ180g の物体を糸でつり、食塩水の中に完全に沈めて静止させると、ばねはかりの値は120gを指しました。この物体の体積は何㎤ですか。ただし、食塩水の1㎤あたりの重さは、1.2gとします。

物体を食塩水に完全に沈め、ばねばかりで静止させた状態の図
図1:食塩水は密度が水より大きい→同じ体積でも浮力が大きい。

手順①:力の矢印 を書く。

この図で、上向きの力は、浮力・ばねはかりが引く力になります。
また、下向きの力は物体の重さになるので、力の矢印は図2のようになります。

塩水中で静止する物体に働く力(重さ・浮力・張力)を矢印で示した図
図2:浮力=体積×食塩水の密度。つり合いで体積を逆算。

手順② 上向きの力の合計=下向きの力の合計

物体が静止しているため、上向きの力の合計=下向きの力の合計が成り立つので、

Xg+120g=180g
X=60

ここで、浮力=水中にある部分の体積(cm³)× 液体の密度(g/cm³)を用いると、

60g=□㎤×1.2g/㎤
□=50

よって、物体の体積は50㎤になります。

5. まとめ:浮力は2ステップで安定する

浮力は、
①力の矢印を書く → ②上向きの力の合計=下向きの力の合計を使って式を立てる
この順番だけで解けます。

覚えるべき公式は、「浮力=水中にある部分の体積(cm³)× 液体の密度(g/cm³)」です。
あとは 沈んでいる体積密度を正しく使うだけです。

6. 関連ページ

浮力は、力の向きやつり合いを図で整理することが大切な単元です。
理科全体の進め方は【理科の指導方針】で整理しています。
また、近い考え方を使う単元として【てこの基本と解き方】、【滑車の基本と解き方】も参考にしてください。
理科全体の分野ごとの対策は、【理科の分野別対策まとめ】で整理しています。

7 . 浮力・力学の学習でお困りの方へ

浮力が苦手な場合、公式を覚えていないというより、処理手順が固まっていないことが多くあります。
また、浮力だけでなく、てこ・滑車など力学全体で共通してつまずいているケースも少なくありません。

  • 力学になると急に手が止まる
  • 力の矢印を書いて整理するのが苦手
  • どこから立て直せばいいか分からない
  • 塾教材を使っているが、復習の優先順位が決められない

このような場合は、単に問題数を増やすより、どこでつまずいているかを整理して、処理の型を固めることが大切です。

浮力や力学の学習でお困りの場合は、お問い合わせページからご相談ください。